クーリングオフ以外の解約方法

クーリングオフによる解約方法が適用できない場合であっても、必ずしも泣き寝入りしなければならないというわけではありません。しかし、クーリングオフによる解約方法の場合と異なり、他の方法で解約するときには一定の負担あるいは理由が必要になってきます。以下において、いくつかのクーリングオフ以外の解約方法を列挙します。

中途解約制度による方法
・特定継続的役務提供の場合 - クーリングオフ以外の解約方法について

エステティックサロン・各種語学教室・パソコン教室・家庭教師・結婚相手の紹介等の特定継続的サービス提供の場合(クーリングオフのによる解約方法が適用できない場合:参照<図>)は、8日間の行使期間の経過後であっても、契約期間がまだ残っている時は一定の条件の下に理由無く解約することができます。
ただ、この場合はクーリングオフ制度による解約方法と違って、解約するためにはすでに受けたサービスの対価+一定額以下の賠償金を支払う必要があります。 参考までに、以下において図示いたします。

期 間 金 額 サービスを受ける前の場合に支払うべき賠償額の上限 サービスを受けた後の場合に支払うべき賠償額の上限
エステティックサロンの解約方法 1ヶ月を超えるものであること 総額5万円を超えるものであること 2万円 2万円または残りの分の10%相当額のうち、いずれか低いほう
すでに受けたサービスの対価
各種語学教室の解約方法 2ヶ月を超えるものであること 総額5万円を超えるものであること 1万5千円 5万円または残りの分の20%相当額のうち、いずれか低いほう
すでに受けたサービスの対価
パソコン教室の解約方法 2ヶ月を超えるものであること 総額が5万円を超えるものであること 1万5千円 5万円または残りの分の20%相当額のうち、いずれか低いほう
すでに受けたサービスの対価
家庭教師の解約方法 2ヶ月を超えるものであること 総額が5万円を超えるものであること 2万円 5万円または1か月分相当額のうち、いずれか低いほう
すでに受けたサービスの対価
結婚相手の紹介の解約方法 2ヶ月を超えるものであること 総額が5万円を超えるものであること 3万円 2万円または残りの分の20%相当額のうち、いずれか低いほう
すでに受けたサービスの対価
学習塾の解約方法 2ヶ月を超えるものであること 総額が5万円を超えるものであること 1万1千円 2万円または1か月分相当額のうち、いずれか低いほう
すでに受けたサービスの対価
連鎖販売取引(=マルチ商法・ネットワークビジネス)の場合 - クーリングオフ以外の解約方法

いわゆるマルチ商法と呼ばれるものの場合、いったん契約を締結して、さらに20日間のクーリングオフ期間が経過したとしても、まだ契やく期間が残っているときは、加入者はいつでも退会することができます。
しかも、この解除がなされた場合、契約を結んだ日から1年を経過していなければ、当該契約に基づき、既に商品の買い受け等を行っている場合には、以下の事由に該当していない限り、商品の販売に関する契約も解除することができます。
その場合、商品の返還されたとき、あるいは商品の引渡し前であるときには、商品の販売価格の90%までは代金の取戻しが可能となります。

  1. 商品の引渡しのあった日から90日を経過したとき。
    →ただし、商品が施設を利用する必要のある場合、サービスの提供を受ける場合は、それらの移転のときから。
  2. 商品を再販売したとき。
  3. 商品を使用し、またはその全部もしくは一部を消費したとき。
    →ただし、販売業者が加入者に商品の使用・消費をさせた場合を除く。
  4. 加入者の責任で、当該商品の全部または一部を滅失、または毀損したとき。
契約の取消による方法
これには消費者契約法によって定められているものと、民法によって定められているものとに大きく分けることができます。

◆消費者契約法によるもの - クーリングオフ以外の解約方法について

消費者は、事業者側が勧誘時に一定の行為をし、あるいはするべき行為をしなかったことにより、消費者が誤解あるいは困惑して契約を結んだようなときは、その契約の種類・様式等に関係なく取り消すことができる場合があります。
これは、消費者保護という意味で、クーリングオフ制度による解約方法と類似の趣旨のものです。したがって、事業者同士の契約である場合は適用されません。
また、これによるときは一定の期間内(最短:追認可能な時から1年以内、(平成29年6月3日より前は6か月以内)最長:契約の時から5年以内に取り消ししなければなりません。

以下において、該当する各場合を列挙します。

  • 事実と異なることを告げられたことにより、事実であると誤解して契やくしてしまった場合。
  • 将来において不確実な事項を断定的に告げられたことにより、それが確実であると誤解して契約してしまった場合。
  • 消費者にとって不利益となる事実のみを告げられなかったことにより、不利益事実は無いものと誤解して契約してしまった場合。
  • 消費者が、その住居等から事業者に退去することを求めたにもかかわらず、退去しなかったことにより、困惑して契約をしてしまった場合。
  • 消費者が退去したいと言ったにもかかわらず、事業者がその場所から退去させないことにより、困惑して契約をしてしまった場合。

◆民法によるもの - クーリングオフ以外の解約方法について

民法は、広く私的な関係一般をテリトリーにしているものですから、消費者契約法では事業者同士の契約の場合は取り消しできなかったのに対し、こちらにはそのような意味での制限はありません。
ただ、当然取消が認められるためには一定の条件を満たすことが必要になりますし、消費者契約法よりは長めですがここでもやはり期間の制限は設けられています(最短:追認可能な時から5年内、最長:契約の時から20年以内)。

以下、各場合を列挙します。

  • 事業者に騙され、それにより誤解を生じて契約をしてしまった場合(いわゆる「詐欺」)。
  • 事業者に威圧的な言葉・態度で脅され、恐怖のあまりやむなく契約をしてしまった場合(いわゆる「強迫」)
  • 未成年者(20歳未満の者)が、親または後見人の同意なしに契約を結んだ場合(いわゆる「未成年者取消」。ただし、一定の例外を除く)。

契約の解除による方法

◆債務不履行によるもの - 解約方法について

債務不履行とは、契約で確定したとおりの内容を当事者の一方が実現しないことを言います。たとえば、売買契約で商品を引き渡すべき期日に用意していない(=遅滞)とか、商品が破損して引き渡すことができなくなったなど(=不能)の場合です。そして、この債務不履行を理由として契約を解除することが民法上認められており、この解除がもっともスタンダードな解約方法と言えます。
この解約方法による場合、期間が契約から10年とかなり長い間認められる反面、条件として、上記のような遅滞・不能といった事実以外にそこに買主の“落ち度”が原因として必要となります。

◆瑕疵担保責任によるもの - 解約方法について

たとえばある特定の物、すなわち世界に1つの“その”物(同種の品物が他に存在するかどうかは関係なし)の売買を内容とする契約を結んだとします。その場合、大原則として、たとえそれが一般的にみて瑕疵のある物(いわゆる「キズ物」)であっても、それでいいと納得して取引したのなら、契約内容の実現は“その”物を引き渡すことで完了してしまいます。
しかし、買主がそれを落ち度なく知らない場合には話は別です。その場合には買主は売主に対して契約の解除をすることができます。この場合の解除は、債務不履行によるものと違って、売主側に落ち度がなくても認められるという点では有利と言えます。
ただ、この解約方法による場合も解除に期間の制限がありますが、買主が「キズ物」であることを知った時から1年以内と民法上では比較的短いことが難点です。

◆合意によるもの - 解約方法について

これは債務不履行・瑕疵担保責任といった民法上定められた制度によるものではなく、端的に従来の契約を「解除する」という内容の契約を新たに結ぶことを意味します。したがって、どんな契やくをするかは当事者の自由が大原則ですから、債務不履行・瑕疵担保責任といった方法による場合と異なり、一定の条件や期間制限といったものを気にする必要はありません。
ただ、不当な契約を結ばせるような事業者側が容易に応じるとは思えませんので、この解約方法による場合はかなり高度な専門的・技術的判断力を備えたうえでの交渉が求められることになるでしょう。

契約の無効を主張する方法

先に述べました契約の取消の場合と同様、大きく分けて消費者契約法によって定められているものと民法で定められているものとがあります。

◆消費者契約法によるもの - 解約方法について

契約書に下記のような一定の条項が盛り込まれている場合、その条項に関しては無効なものとして排除される場合があります。もちろん、消費者契約法によるものなので、先述のとおり事業者同士の契約の場合は適用外となります。

  • 事業者の落ち度によって生じた損害賠償は免除するという条項。
  • 消費者が支払うべき場合の違約金・賠償金が計算上明らかに不当に高額に設定されている条項(この場合、その不当な超過部分のみが無効となります)。
  • 法律一般の精神に反して、消費者の利益を一方的に害するものと思われる条項。

◆民法によるもの - 解約方法について


・公序良俗違反の場合 - 解約方法について

すなわち社会的にみて許されないような内容・手段の契約を結んだような場合(例えば、愛人契約、出会い系・アダルトサイトの一部等の場合)に、その契約全体の無効を主張するという方法です。

・錯誤のとき - 解約方法について

いわゆる“勘違い”によって契約の重要な点について内容を誤解していたとき、その契約自体の無効を主張できるときがあります。
ただし、勘違いをした原因が自らの重大な過失(=少々の注意によって回避できる程度のもの)によって招いたと評価できるときには、この方法は採りえません。また、原則的にですが、ある商品が本当に自分にとって必要だったのかどうか等、契約を結ぶまでのいわゆる「動機」の部分について勘違いがあったときも契約の中身そのものではないということで無効主張はできません。

その他の方法

解約という手続き以外にも救済手段はございます。

◆支払停止の抗弁 - その他の(解約)方法について

クレジット契約やローン契約という割賦販売取引によるとき(クーリングオフが適用されないとき:図参照)、一定の条件の下、「商品が届かない」、「欠陥品が届いた」あるいは契約の取消・解除・無効等の主張といった抗弁事由を理由として信販会社(いわゆるカード会社)に対して支払を拒否できるときがあります。

◆損害賠償請求 - その他の(解約)方法について

これは、先に述べました債務不履行あるいは瑕疵担保責任を理由とする場合(3.契約の解除による方法:参照)、または事業者側の不法行為に基づく損害賞請求という形で行うときが考えられます。必ずしも解約を伴うものではありませんが、いずれにしても金銭的に生じた損失の補てんを図ることができる意味で1つの手段にはなります。